セクシャルマイノリティについて徐々に多様性が認められ、従来LGBTと呼ばれていた名称もLGBTからLGBTQへと、最近ではLGBTQ＋「エル・ジー・ビー・ティー・キュー・プラス」と呼ばれるようになってきました。実はLGBTQ＋はLGBTTTQQIAAP＋の総称※。今回は10番目「A」の頭文字となっているAsexual「アセクシャル（無性愛）」についてご説明いたします。また、似ているようで異なる意味を有すアセクシャル（無性愛）とノンセクシャル（非性愛）の違いについても記事の中で触れたいと思います。
LGBTQ+についての詳しく読みたい方はこちら⇒LGBTはもう古い？最新LGBTQ＋の「プラス」の意味！LGBTQ＋はLGBTTTQQIAAP＋の総称！？
Lesbian（レズビアン）、Gay（ゲイ）、Bisexual（バイセクシャル）、Transgender（トランスジェンダー）、Transsexual（トランスセクシャル）、2/Two-Spirit（ツースピリット）、Queer（クィア）、Questioning（クエスチョニング）、Intersex（インターセックス）、Asexual（アセクシュアル）、Ally（アリー）、Pansexual（パンセクシャル）
項目
アセクシャル（無性愛）とは？
アセクシュアル（asexual）は、日本語では無性愛・無性愛者、英語でasexualという綴りからエイセクシャルとも呼ばれています。また、略称として「a（エイ）セク」、「a（エイ）セクシャル」「アセク」など人によって書き方・呼び方は様々。アセクシュアルとは、そもそも恋愛感情、性的欲求のない人のこと、もしくは結婚などの法的な生活や性生活に全く興味のない人のことを言います。コトバンクに記載されている意味は以下になります。
性別や恋愛感情の有無にかかわらず他者に対して性的な欲求を抱かないこと、または、そうした性的指向を持つ人のこと。｢無性愛者｣とも呼ばれる。(2018-11-06) 出典元：アセクシュアルとは – コトバンク
アセクシャルは周囲から、”恋愛に対してトラウマをもっている”、”性に興味ない時期なだけ”、”愛せるいい人に出会っていない”など成長の通過地点と認識されてしまうケースが多く、世間一般的にいう「常識人」からすると「無性愛者」の存在は理解されにくいようです。
心理学においてもまだアセクシャルはあまりセクシャルアイデンティティとして認知されていません。ただ、実際の調査によると※１アセクシャルと呼ばれる人は人口の１％存在することがわかっており、無性愛者が抱えている社会的ストレスや孤独は徐々に理解が深まってきています。
アセクシャルは、最近認知度が上がってきましたが特に新しいものではもなく、名称はついていなかったものの古くからアセクシャルに該当する人は存在していました。実際に、哲学者、芸術家、作家、作曲家など、結婚しなかった人、人生で一度もセックスをしなかった人などアセクシャルではないかと推測される著名人が数名存在します。歴史上の人物・日本におけるアセクシャルを公表している芸能人については別の記事でまた触れます。
アセクシャルの特徴
アセクシャルと呼ばれる人は実際にという人のことを示すのでしょうか。
アセクシャルの特徴を見てみましょう。あなた、もしくは周りの人に思い当たる方、いらっしゃいませんか？
- 恋愛におけるキスやハグなどのスキンシップに対して抵抗 or 拒絶する
- 下ネタやエロトークに全く反応を示さない or 反応が社交辞令程度
- 異性が好む服装に対して例え恋人であっても惹かれない・トキメキを感じない
- パートナー（一般的には恋人）に対するモチベーションがカラダ目的でない
- 映画などを鑑賞する際セックスシーンなど濡れ場や下品な演出を嫌う
- 自分で子どもを産みたいという願望がない or セックス～妊娠～出産までの過程を嫌う
- 恋愛の駆け引きよりパートナーの個性について深く知ることに重きをおいている
- 合コン・相席屋・クラブなど男女が交わる場は苦手
- 一般的に性欲と呼ばれるものを一切感じない or 興味がない
こうやってアセクシャルの特徴をみてみると、「ノリの悪い冷たい人」として世間からは認識されてしまう可能性が高く、逆にアセクシャルの人も「一般的な常識」になじめずに表面的に合わせていることが辛いと悩みを抱えている方がいます。また、個人の個性に興味を抱くと恋愛対象として見られていると誤解されてしまい、一般の人であれば恋愛へ発展するシチュエーションの断り方に悩むアセクシャルの方もいます。留意したいのが、無性愛者だからと言って、人が嫌いなわけではありません。アセクシャルは、人との触れ合いによる物理的な関係ではなく信頼関係・サポート・思いやりなど、より意味のある深い人間関係を築きたいのです。
人は誰しも孤独は好みません、無性愛者でもパートナーと結婚はしたいし子供も欲しいという人はいます。
また、セックスは好まないけれどもパートナーのためにセックスをするというアセクシャルの方もいらっしゃいます。
アセクシャル診断
アセクシャルは病気ではないので診断されるものではありません。
個人でアセクシャルであると認識することができれば特に敢えてアセクシャルの診断をする必要はないないでしょう。
ただ、上述したようなアセクシャルの特徴に当てはまる、日常的に疑問にもっているけれどもそれをアセクシャルとして認識していない、もしくは、一般的に求められることに対して対応できない自分がおかしいのか？と自問自答している人がいらっしゃったら、アセクシャルの診断をしてみてください。
世間とのギャップに苦しんでいる方は、ひとつ「自分はアセクシャルなんだ」と周りに認めてもらう前に自分で自分を認めてあげるのがファーストステップかもしれません。あくまでも選択権は自分にあるということはお忘れなく。
アセクシャルチェック診断
チェック方法：１０つの設問に答え５つ以上該当する場合はアセクシャルの可能性が高いです。
設問１ 普段から性欲がない・セックスについて全く考えない （はい/いいえ）
設問２ 一般的な異性に対する見方と自分の見方が異なっていることに気づいている （はい/いいえ）
設問３ セックスについて性的興奮や感情を覚えずどちらかというと医学的・生物学的なものとして捉えている（はい/いいえ）
設問４ 正直自分がストレート・ゲイ・レズビアン・バイセクシャルなのか本当のところよくわからない（はい/いいえ）
設問５ 裸をみても特に性的欲求やエロい感情が沸かない（はい/いいえ）
設問６ 自慰行為が嫌い、もしくはしたとしてもAV等々にでてくる裸などを妄想していない（はい/いいえ）
設問７ スキンシップなど物理的な触れ合いは「愛」とは無関係だと思っている（はい/いいえ）
設問８ セックスをしたことがない（はい/いいえ）
設問９ 映画や本、メディアに登場するセックスシーンは不要もしくは退屈だと感じる（はい/いいえ）
設問10 会話で出てくる下ネタに対して本当は興味がなかった（はい/いいえ）
アセクシャル（無性愛）とノンセクシャル（非性愛）の違い
アセクシャルといっても「愛」の形は様々です。この後触れますが、アセクシャルは単なる総称で色んなタイプが存在します。
ここでご説明したいのは、アセクシャル＝無性愛とノンセクシャル＝非性愛の違いついて。
ノンセクシャルも大きな意味合いでアセクシャルにカテゴライズされるため、アセクシャルとよく混同されがちですが、アセクシャル≠ノンセクシャルは似ているようで異なる意味を有します。コトバンクではノンセクシャルについて「他者に恋愛感情を抱きながらも性的欲求を感じない人は｢非性愛者(Nonsexual)｣として区別されることもある」と定義づけられています。ノンセクシャルは略称「ノンセク」とも呼ばれています。
アセクシュアル
性別や恋愛感情の有無にかかわらず他者に対して性的な欲求を抱かないこと、または、そうした性的指向を持つ人のこと。｢無性愛者｣とも呼ばれる。このうち、他者に恋愛感情を抱きながらも性的欲求を感じない人は｢非性愛者(Nonsexual)｣として区別されることもある。性的少数者を指す｢LGBT｣という言葉が広まりつつある一方で、アセクシュアルへの認知度は低く、悩みを抱える当事者も少なくないとされる。
(2018-11-06)出典元：アセクシュアルとは – コトバンク
簡単にいうと、アセクシャルとノンセクシャルの違いはパートナーに対して恋愛感情を抱くか否かです。
漢字で見分けるほうがわかりやすいかもしれません。アセクシャルは性＆愛に対して「無」、今もないしこれからもないという否定的な意味。ノンセクシャルは性＆愛に対して「非」、つまり本来あるものに対して「よくない」「そうでない」と否定的な意味。
アセクシャル（無性愛）とノンセクシャル（非性愛）の違い
◇アセクシャル ＝ 恋愛感情を抱かない、性欲がない
◇ノンセクシャル ＝ 恋愛感情を抱く、性欲がない
アセクシャルの多様性
アセクシャルには異なる考えを持つ「タイプ」が存在します。下にある画像の通り、海外のサイトでも様々なアセクシャルのタイプを紹介しており、正直かなり複雑です。恐らく「性欲がないけど、彼氏・夫のことが好き」など考えている方は下記タイプに合致するものがあるのではないでしょうか。
アセクシャルといっても様々なセクシャリティがあり、必ずしも恋愛できない・性的行為ができないという訳ではない、むしろ性的欲求があるケースがあるというのをご説明するために代表的なものを今回はご紹介いたします。
| 英語名称（日本語訳） | セクシュアリティの意味 |
| sex-positive（セックスポジティブ） | アセクシャルに限らず用いられるが、性に対する興味関心はなくても合意のもとで不快感なく性行為に及ぶことができる |
| antisexual（アンティセクシュアル） | 性行為に対して嫌悪感や反対意識を持つ人・人間の営みとして問題はないが実際に自分はしたくないという客観的な見解を示す |
| demisexual（デミセクシュアル）半性愛 | 人間関係における信頼やパートナシップなど心の結びつきが生まれて初めて、ごく一部の相手に対して性欲を抱くことができる |
| grey-A（グレーアセクシャル） | アセクシャルと非アセクシャル（一般的なセクシュアリティ）の間に位置し、時々性欲を示す等セクシャリティ定まっていない |
| aromantic（アロマンティック） | 他者に対して恋愛感情が全くない・友情や信頼関係における感情は抱く可能性がある |
| heteroromantic（ヘテロロマンティック） | 異性に対して恋愛感情を抱くが性的欲求はない |
| homoromantic（ホモロマンティック） | 同性に対して恋愛感情を抱くが性的欲求がない |
| biromantic（バイロマンティック） | 異性・同性両者に対して恋愛感情を抱くが性的欲求がない |
| panromantic（パンロマンティック） | 性別の区分がなくどのセクシャリティを恋愛対象とするかは定まっていない・性的欲求がない |
（参考元：AVENWiki:Asexuality）
どうして無性愛者に・・・？
アセクシャルにどうしてなってしまったのだろうと要因や原因を探っている方へ。
恐らく、過去の恋愛や性行為におけるトラウマなのか・・？メンタルヘルスの問題なのか・・・？
アセクシャルは治療できるものなのだろうか・・・？と頭を抱えているかもしれません。
アセクシャルは精神疾患でも発達障害でも機能障害でもありません。病気ではないので治療法もございません。
実はアセクシャルは大多数の人が該当すると言われています。
ただ、実際にアセクシャルと認めている人はごく一部で、仮に性欲がないと認めていてもそのまま日常を過ごす人が大半を占めています。
アセクシャルであるかどうかを決めるのはあなた自身なんです。
アセクシャルはゲイやレズビアンやバイセクシャルの方と同様に、特にアセクシャルであることに要因や原因はありません。
単に、Sexual Orientation（セクシャル・オリエンテーション）と呼ばれる性的指向がアセクシャルなのです。
アセクシャルのタイプの多様性について触れたように、アセクシャルといってもいろんな「愛」のカタチがあります。
ひとつの概念に囚われず、あなたらしい愛を模索してみてはいかがでしょうか。
性的指向
アメリカ心理学会によれば、性的指向とは「こうした性的魅力を感じることや、関連する行動、および同じ性的指向を共有するコミュニティの成員であるという意識などに基づいた個人のアイデンティティに対する感覚」である 出典元：Wikipedia
アセクシャルへの理解~心に留めておきたい７つのこと~
今回、アセクシャルについてご説明してきましたがいかがでしたか？
「自分はアセクシャルだな」「あの人はアセクシャルかもしれない」など気づきはありましたか。
アセクシャルは世の中の「常識」や「一般」と呼ばれるものから理解されることが難しく誤解されてしまうことがよくあります。
人生を歩む中で経験することや付き合う人で悩んでいらっしゃる方は多々らっしゃるかと思います。
アセクシャルの悩み例
- 社会に適応するために恋愛をしたい
- 友達はみんな彼氏を持っているけど恋愛感情がなく置いてけぼりになっている
- パートナーがいるけれども性欲が沸かない・夜の生活が苦痛
- 彼氏・彼女・夫・妻がスキンシップを嫌がる・接し方がわからない
- セックスをしたことがないけれども性行為をしたくない・乗り気にならない
- パートナーが欲しいけれども性行為をしたくないことを理解してくれる相手がいない
- 全く興味ないことへ対して周囲からプレッシャーをかけられる
誰しもが「愛」を求めています。ひとは一人では生きてはいけません。誰かしらのサポートを受けて愛されて生きていくことが幸せでもあります。
その基本的な幸せを求めることはアセクシャルにも同じことが言えるのです。
ひとりでも多くアセクシャルに対して理解が深まるよう、そして「形」にこだわらない「愛」が認識される世の中になることを筆者は願っています。
さいごにアセクシャルをよりよく理解するために心に留めておきたい６つのことをご紹介いたします。
- いろんなタイプがアセクシャルには存在する
- アセクシャルに該当するからといって「愛」に対する感情がない訳ではない
- 恋愛や性行為におけるトラウマが要因でアセクシャルにはならない
- アセクシャルは病気でも機能障害でも発達障害ではない
- アセクシャルに該当する人、無性愛者でもセックスをすることを選ぶ人もいる
- アセクシャルかどうかを決める選択肢は自分にゆだねられている、他人に定義されるものではない
参考文献
※１Bogaert, Anthony F. (2004). ” Asexuality: prevalence and associated factors in a national probability sample”. Journal of Sex Research 41(3): 281 Retrieved on 31 August, 2007.
参考URL
https://www.rebelcircus.com/blog/demisexual-cupiosexual-aromantic-many-different-forms-asexuality/
https://www.ranker.com/list/famous-people-who-died-a-virgin/celebrity-lists
https://www.asexuality.org/en/topic/116779-difference-between-gray-asexuals-and-sex-positive-asexualdemi/
